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峠(上) 司馬遼太郎著 |
峠 (上巻) (新潮文庫) (2003/10) 司馬 遼太郎 商品詳細を見る |
どこで、誰から聞いたのか、忘れた。
司馬朗太郎の小説の中で一番面白いのが、
この「峠」である、ということ。
明治維新のさなか、官軍に敢然と戦いを挑み、
一時官軍を押しまくった越後の長岡藩。
その中心人物、河井継之助。
「峠」とは、その生涯を描いた小説である。
河井継之助という人物は、「立場」というものを尊重する。
継之助は、生涯を通じて、武士であり、
長岡藩の藩士である、という立場から
物事を考え、行動し続けた。
武士とは、美であり、
長岡藩とは譜代大名である。
その立場の中で、どう行動するか。
一方で、継之助は、
何も生み出さない武士が日本を支配するという武家社会が
続かないことを予見してしまうし、
幕末の政情が刻々と幕府に不利に動いていくことも予見できてしまう。
消えゆくであろう、自分の立場を分かりつつ、
あくまでもその立場を捨てず、できる限りの手を打っていく。
その生き方、あれに似ていないだろうか・・・?
あれとは、「サラリーマン」だ。
個人の力でどうにもならない景気変動。
旧然とした状態で、これもどうにもならない会社。
そんな中で、会社を辞める=立場を捨てる、ということもできず、
自分のできることを精一杯行っていこうとする。
何だか仕事に追われるサラリーマンに似ている。
そんな状態でも、力を発揮し、周囲を動かしていく継之助に、
世のサラリーマンは自分を重ね合わせるのかもしれない。
だから、司馬遼太郎の中で、
一番面白いと評価を受けるのかもしれない。
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